フィルムに眠ってた、色
それが何かは全くわからない。
乳白色の靄に、紺碧の海、重なり、なんとも言えない
エモーショナルさがそこにはある。
まるで、それは酔った帰り道。
彼女と笑い合いながら、ビル群を抜け、川沿いを進む朝の感情のようだ。
「こっち」から「向こう」
はるか遠方に、向こう岸が見え出す。
俺の旅には、フェリーがつきものだ。
大切なのは、こっちではない、向こうだ。
こっちと、向こうの間に、海が横たわり、それを跨ぐことで、向こうへつく。
この儀式が、旅において、最重要である。
海により、日常が断絶され、非日常に赴くのである。
なので、俺は旅により、フェリーを用いる。
陽気なカモメが並走し、白波が生まれ死ぬ。
太陽は睨みをきかし、夏であることを強く誇る。
甲板で、潮風にかき乱される髪を抑え、君に口づけする。
「向こう」へ、さぁ。
また旅に出る
オンボロの軽に期待を詰め込み、
窓をあけ放ち、洗い立てのHanesを帆のように膨らまし、
田園の海原を前へ前へと進む。
色濃い夏が、むせるほどの夏が、
まだ人に触れられてない夏があるのではと、
ひた走り探し続ける。
やはり、旅は何よりも甘美だ。
買うと失う
あの揺れた日に、スーパーにいった。
いろんなものがなくなってた。
賢しい人さまは、他人を蹴散らしても生きていこうとする。
空腹と意地汚さ、どちらが怖いのか。
その時がきたとして、崩れゆく家に、流されゆく家に、食べ物をおいてどうするんだろうか。
死んだあいつの、最後の言葉は「ありがとう」だった
仲のいい、あいつが死んだ。
もう何年も、何十錠も薬を飲んでずっと入退院を繰り返してた。
どれだけ辛くても死ぬことは悪だ。
なぁ、そうだろ。
汚い命を抱えて、俺は生きる。