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Youth man and the Sea

写真、フィルム、デジタル、音楽、それらの戯言

俺がアメリカに行くことなんか一生ないだろう

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明け方クラブ帰りの彼女から電話がくる。

iPhoneの画面が割れたと、それをタダにしたいという。

「ずるいことは、田原に相談するのが一番やけー」と甘い声を出す。

 

土曜なのに、仕事な俺と。

夜遊びから帰りの彼女。

朝の数分、入れ替えの間。

まるで舞台袖での会話。

転換の間に、今の俳優と次の俳優が会す。

それに近い。

 

職場に着くまでの40分。

彼女は、25分ぐらいのところで、思いついたように言う。

 

「そーいえば、メイ、今好きな人がいるけー」

 

分かってる。彼女は良い女だ。予想はしてた。

こんなに長く空き状態が続くわけがない。

 

今は彼女とは希薄な関係だ。

彼女が空いた時間に、電話かけてきて、少しだけ話す。

仕事の哲学、恋愛の疎ましさ、過去のセックス、俺があの時に恋人がいなければ、そんなことを話す。

俺は、彼女との会話も、彼女との情事も好きだった。

本人には伝えてないが、何度かは彼女と付き合うことも真剣に考えた。

 

「まだ、キスしかしとらんけー」

 

彼女は、残り少し。最後の右折で言った。

「失恋」と言えば、過度だし。

「お幸せに」と言えるほど、俺は淡白ではなかった。

 

「ただ、田原がもしアメリカに一緒に行こうって言えば、ついてくけー」

 

彼女は俺が、エンジンを切った時にいった。

別にアメリカに行くなんて、話はしてないし。

俺がアメリカに行くことなんか一生ないだろう。

 

「わかった、その時は言うよ。一緒に行こう」

 

多分だけど。彼女はまだ俺を好きだし、俺は彼女がまだ好きなんだろう。

電話を切り、職場につき、タイムカードを押しながら、そう思った。