夏の夜に集る紙魚。
涼しい風が頬を撫でる。
まるで少女のうなじのように、純白な風だ。
初夏はいつでも、新鮮であり、肉体と精神を若くしてくれる。
少年の額ような太陽に、初恋の恋文のような若々しい木々の葉。
ファインダーを覗き、さらにメガネを挟み、そして銀塩に焼き付ける。
そうでもしないと、俺は「若さ」を直視出来ないほど、年老いたのだ。
若さに、畏怖を感じる時がある。
河原で何をするわけでもなく、夜を待つカップル。
愛の永続性を、頭ではなく心で信じてる二人。
それを覗くと、老婆心ながら不安になる。
人生は有限である。
眠りは死の従兄弟であり、沈黙は死の息子だ。
夜を待つのではなく、迎えにいく。
そして、多くの人と、多くを語らう。
夏の夜は息が長く、まるでバードマンのカメラワークのように、切れ間なく続く。
白いヘインズが汗を吸い、草臥れるまで遠回りをして進もう。