忘れていくことすら、忘れていく。
思い出は冷たい奴で、感情が呼んでるのに定時通りには顔を出さなかったり、時間を違えて、さもしい夜にやってきがる。
俺は賢しいふりをしているだけの人間なので、多くを忘れていく。
そして、誰かに、同じことを何度も聞く。
写真を撮り、歌詞を綴り、それでも忘れてく。
一番長く付き合った彼女のシャンプーの銘柄、死んだあいつから貰ったオイルライターのロゴ、
シンガーのあの娘と別れた後にみた映画のラストシーン、
図書館でたまたま借りて偉く気に入ったハードボイルド小説のタイトル、
あの夜になぜ死なずにすんで、なぜ今も生きれてるか。
そして、多くの穏やかな日常に、この身を浸してると、忘れてくことすら忘れてく。