さぁ、今日も、美味しいものを食べよう。
美味しいものを食べよう。
嫌なことがあった日に。例えば、雨の日に。
良いことがあった日に。例えば、晴れの日に。
賢しくなればなるほど、自分が動物だって忘れる。
まるで、システマティックで、すごく高機能な何かと思ってしまう。
でも、実はそんなことなくて、ただの生き物なんだ。
長ったらしい文章もかけるし、スマートフォンで海外ドラマを見れる。
レイトショーで映画を観に行くぐらい、うまく時間を使うし。
わからない事は全部調べて、わかって気になると安心して、また、忘れる。
多くの時間を生き物っぽくないように生きてるから、忘れがちだけど。
やはり、俺は、ただの生き物なのだ。
美味しいものを食べると安心する。
ほっとする。心の奥底がじわっと暖かくなるんだ。
そりゃ、そうだ。空腹は死の赤ちゃんだから。
そんな自分を見ると、生き物であるということが、わかり、さらに安心をする。
だから、俺は美味しいものを良く食べるようにしてる。
極力、季節のものを選びつつ、作り手の顔が見えるような小さな店で、
そこにしかなくて、それでいて美味しいものを食べる。
綺麗な油に、小ぶりなコロッケたちが泳ぎ立つ様を観てるだけで幸福を感じる。
紙につつまれて、その紙ごしに温度が伝わり、衣のサクサクさを指先で味合う。
口に運び、「暑いから気をつけろ」と、「暑いうちに食べろ」が、大喧嘩する。
齧ると、熱気が口の中にひろがり、肉汁の旨味と芋の甘みが押し寄せる。
思わず、にこやかになる。
口の中が火傷しきったころ、胸が暖かくなり、笑顔が溢れる。
そして思う、やはり、俺は、ただの生き物なのだ。
さぁ、今日も、美味しいものを食べよう。