キオク
例えば昔の恋人と向かった場所も、君と言った気がする。
そう告げると君は、この週末は喧嘩すると膨れた。
ただ俺は、この事実をそんなにネガティヴとは思っていないよ。
記憶が望むものに置き換えられていく特質があるんだ。
さすれば、如何に俺の愛が深いか伝わるでしょ。
そう言うか悩んでる間に次の週末になって、君とデートしてる。
冬の匂い
蟻の巣みたいなビルの暖房は身体に堪える。
一日中、あの風を身体に浴びると生きてるか死んでるか分からなくなる。
残業が終わり、日を跨ぎながら大股でビルの外に出る。
すると、「冷たい」や「寒い」より「痛い」と思うほどの浜風が身体を叩く。
すると実感する。
大丈夫、大丈夫。
うん、生きてる。
「歩く」と言う遊び
身の丈にあった速度で進み、目につくものに意見を述べる。
隣に誰もいなくても、いいし。
隣に誰かいるなら、最高だ。
その誰かが気が合って、笑い合える関係なら、この上ない。
人と人はすれ違いばかりで、同じ方向に歩けるのは、人生では一時だ。
その一時の事実を忘れて、同伴を享受することは幸せに違いない。
そして、良く忘れがちな、事実を思い出せる夜は尊い。
張った脹脛を少しだけ労って、寝床に着こう。