Youth man and the Sea

写真、フィルム、デジタル、音楽、それらの戯言

「道々、考える」


どれが「正解」な道かは、いつもよく分からないけど、それは道半ばに「正解」だったと思えるようにすれば良いと思う。

例えば、少し前の話。助手席で、俺のアルバムを聴きながら難しい顔で歌詞を追いかけていた彼女。その姿は微笑ましく、それを思うと、今でも胸が甘くなり、ここまでの全てが「正解」な気がしてくる。俺は、悲しくも喜ばしくも、心底、単純な人間だ。

また、普段とは違う場所でライブをして、フロアが静かになり、ゆっくりと熱を帯びる瞬間。鳩尾に高熱が上がってくる、あの興奮。やはり、ここまでの全てが「正解」だったんだな、と思う。

あの-多くの決断が差し迫りながら、どうするか決めあぐねていた-夜に、小さめなスクリーンに映ってたラストシーンのセリフ「道々考える」という言葉がよぎる。

仕事終わり、染みたっれた今日に捕まらないように、暗く狭い映画館の端の席に滑り込み、息を潜めて見た、あの映画。

「道々考える」ほんとに、その通りだ。

若い頃は決断のたびに「正解」を選ぼうとしてた嫌いがある。
今は「正解」を選ぶんじゃなくて、選んだものを「正解」と言えるように生きてきたい、と強く思う。
そのためには、慎重に選んで、勇気を出して捨て、自分をよく理解し、窘め、諭し、そして愛する必要がある。
上手く出来る時もあれば、まったく上手くいかない時もあるけど

それでも、とりあえず、俺にも俺とすれ違う人たちにも、いい週末を。

何でもあるけど、何もない。その上、何でもない日。


何かを書きたいと思う。
何をかと、聞かれれば困る。

郊外のショッピングモールの飲食店が並ぶコーナー。
お腹が空き立ち寄ったが、何を食べたいか一向に分からない。
そんな、心情とよく似ている。

もしくは深夜の SA だ。どれも不味そうに思える。
でも、この先の道のりを考えるとお腹に入れなければいけない。
生きてくために、食べるはずなのに、それが自分を殺すような気がして泣けてくる。
まるで、今書いている文章と同じだ。

そして、もし書き出すと、定るのかと言われれても、答えは定まらない、だ。
そして、何かを書き出してもだいたいは駄文で終わっていく。
悲しいかな。

もう少し、文才と根気があれば、違うことになったかも知れない。
そう思いながら、ぬるくなったコーヒーの底に溜まった、カスを覗く。

仕事が終わらないのは、自分が遅いからか、仕事が多いからか。
帰ってこない彼女に悪態を吐く。
昨日の夜遅くに、玄関の彼女の靴たちを下駄箱に放り込んだ。俺は、一人暮らしなんだと、自分に言い聞かす。

普段は、底が平たい靴を履くのに、高いヒールを履いても綺麗に歩く彼女。
ほんとにむかつく、女だ、そしてそんな女がいると思うと、この世界は残酷な気がしてやまない。

今日は早く寝よう。

フルハウスは降りれない。

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数日前、テレビ、ニュースサイト、キャスター、評論家たちが一生懸命に革命をとめようとする。
今の自分の生活を守りたいだけの馬鹿だ。

 

方や、馬鹿で貧乏な民衆は「俺たちだけ不幸は堪らない」と言う。

 

「ならば、混沌にしてみよう。流れがないから、底に俺たちは沈殿するのだ」
「激しくシェイクして、天と地の境が分からなくしてやる」

 

そんな声が聞こえてきた。

 

幕が開くと、真っ赤に染まっていく、大国。
それが良いか、悪いかは、まだ分からない。

 

ただ、20世紀の羊飼いとして栄華を誇ったメディアでさえ、
少しだけ賢しくなった羊を導くことが難しくなった。
それを目の当たりにして、何とも言えない気持ちになった。

 

多分、俺の住むこの国は変わらないだろう。
金がなくても、賢しくありたいものだ。

俺がアメリカに行くことなんか一生ないだろう

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明け方クラブ帰りの彼女から電話がくる。

iPhoneの画面が割れたと、それをタダにしたいという。

「ずるいことは、田原に相談するのが一番やけー」と甘い声を出す。

 

土曜なのに、仕事な俺と。

夜遊びから帰りの彼女。

朝の数分、入れ替えの間。

まるで舞台袖での会話。

転換の間に、今の俳優と次の俳優が会す。

それに近い。

 

職場に着くまでの40分。

彼女は、25分ぐらいのところで、思いついたように言う。

 

「そーいえば、メイ、今好きな人がいるけー」

 

分かってる。彼女は良い女だ。予想はしてた。

こんなに長く空き状態が続くわけがない。

 

今は彼女とは希薄な関係だ。

彼女が空いた時間に、電話かけてきて、少しだけ話す。

仕事の哲学、恋愛の疎ましさ、過去のセックス、俺があの時に恋人がいなければ、そんなことを話す。

俺は、彼女との会話も、彼女との情事も好きだった。

本人には伝えてないが、何度かは彼女と付き合うことも真剣に考えた。

 

「まだ、キスしかしとらんけー」

 

彼女は、残り少し。最後の右折で言った。

「失恋」と言えば、過度だし。

「お幸せに」と言えるほど、俺は淡白ではなかった。

 

「ただ、田原がもしアメリカに一緒に行こうって言えば、ついてくけー」

 

彼女は俺が、エンジンを切った時にいった。

別にアメリカに行くなんて、話はしてないし。

俺がアメリカに行くことなんか一生ないだろう。

 

「わかった、その時は言うよ。一緒に行こう」

 

多分だけど。彼女はまだ俺を好きだし、俺は彼女がまだ好きなんだろう。

電話を切り、職場につき、タイムカードを押しながら、そう思った。

10 代みたいな恋を、 30 代で。

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美味しいものを食べにいこうよ。
そのあと、少しだけ川沿いを歩こう。
下手くそなハミングと、血液みたいなコーヒー。
今までの恋人と、今までのセックスの話。

 

疲れ切る前に部屋に戻ったら、言葉と靴を脱ぎ捨てる。

ゆっくりと愛撫しあって、昂りきる前に止めて、一緒に湯船に浸かろう。

 

湯船でもキスを重ね、俺の髪も身体も洗っておくれ。
ドライヤーをあてる間もなく、ベッドに雪崩込み、続きをしよう。

 

翌日、寝不足になることは分かってる。
それでも、高揚感が寝かしてくれない。
夜に漕ぎ出そう。

 

10 代みたいな恋を、 30 代で。

生きてて良かったって日が死ねば良かったって日を上回りますように。


多くの人と話した夜。
洗ってもヤニ臭い髪を疎ましく、寝床に。
起こしたら怒る君に、それでも口づけをして。
不機嫌な寝息に、ご機嫌な寝息を重ねて。

夜が底つく前に眠りを触る。
生きてて良かったって日が死ねば良かったって日を上回りますように。

服を着て、恋をするのに、最後は裸で愛し合う。

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俺はいつからか、お洒落をしなくなった。

その分、身体に気を使うようになった。

 

他者ではなく自己に投資をする。

自己が健全であれば、他者との関係も良好になる。

 

それを知らない人が多い。特に若い人は。

教えてあげたいけど、疎ましく思われるから黙って見てる。

 

服を着て、恋をするのに、最後は裸で愛し合う。

人間は賢しい。